2人のBirthday
「葉、誕生日おめでと~~~!!!!」 司会係ホロホロが叫ぶと、民宿炎にすさまじいクラッカーの音が鳴り響く。 「悪りィな。オイラのために。」 葉は『うぇっへっへ』と自分の頭を撫で、照れながら言った。 そう、今日は5月12日、葉の誕生日なのだ。 卓袱台の上には、たまおと竜が作った豪華なご馳走がズラリと並べられていた。部屋の壁にも、折り紙で作ったわっかが飾られていて、いつもの炎からは想像も出来ないほどだ。 「今日は年に一度のあんたの誕生日だし・・とりあえず『おめでとう』だけ言っておくわ。」 今日のアンナは、何時もと比べ少しだけ、口調と表情が優しかった。 「うぇっへ、あんがとな、アンナ。」 葉はアンナの言葉に笑顔で答えた。 アンナは葉の笑顔に、少しだけ赤面していた。 「まったく、今日の葉は何時にも増してユルイね。」 この一言で、さっきまで活気が五月蝿いほど溢れていた民宿炎が、一気に凍りついた。そのわけは・・ 「ハオ!!」 葉の双子の兄、ハオが、炎にある木の上に突然現れたからだ。 「ふっ、化け物でも見たかのような声出さないでよ。」 ハオはクスクスと笑った。 「何しに来たのよ。」 アンナは、男性陣の前にずんと現れ、真っ先にハオに問い掛けた。 ハオはアンナを見て、ニッコリと笑顔になった。 「何しにってそんな、今日は誰の誕生日か知っているんだろう?」 ハオもアンナに投げかけた。 アンナはハオの言葉を聞いて、何か感づいたようだった。 「今日はボクと葉の誕生日だよ?葉だけ祝ってないで、ボクも一緒に祝ってほしいと思ってさ。」 そしてハオは右手を出した。その右手には、四角い箱が乗っていた。 「もちろん、タダでとは言わないさ。ちゃんとお土産持ってきたし。」 そう言うとハオは、四角い箱を開けた。 その箱の中には、白いバースデーケーキが入っていた。 「ね?これでいいだろう、葉。」 ハオは今度は葉に問い掛けた。 「わざわざケーキも持ってきてくれたんだし、今日くらいいいんじゃねぇか?」 葉は答えをアンナに託した。 「しょうがないわね、今日だけよ!」 そして、民宿炎の居間――― 卓袱台の真中には、ハオが持ってきたバースデーケーキが乗っていた。 ホロホロはそのバースデーケーキを、涎を垂らしながら覗いていた。 「それじゃ、切ろうか。」 ハオはそう言うとナイフを取り出し、ケーキを切ったが、真っ二つには切らず、そのケーキの半径に値する長さだけを切った。 「なんでそんな半端な切り方してるんよ。」 葉はハオに問い掛けた。 普通なら、最初に半分に切り、またそれを半分に切り、と、これを繰り返していく。 だが、ハオはケーキの半径分しか切らなかったのだ。炎にいる全員が、葉と同じくそう疑問に思っただろう。 「まぁまぁ、ちょっとした余興だよ。」 ハオは答えた。だが、まだちゃんとした答えまではわからない。 「ここからは葉に切ってもらうんだ。ボクが入れた切り込みを基準として、葉の好きなところで大きさは関係なく切っていく。でも、ちゃんと人数分になるように切ってね。これだけが条件だよ。」 ハオは、余興の説明をした。 葉は、興味を示していたようだった。 「面白そうだな。それじゃ、切るぞ。」 葉はケーキを切りはじめた。 その大きさは、ケーキの3分の1の値にあたるものもあれば、幅が1cmにしかならないのもあった。 「切り終わったぞ。」 葉はケーキを切り終えた。 見た目の大きさも、実際の大きさも全てがバラバラだ。 「それじゃ、誰がどのケーキを食べるか、ジャンケンで決めよっか。」 ハオの一言で、全員腕を出し、ジャンケンをやる準備が出来た。 だが、アンナだけは腕組みしていた。 「待ちなさい。」 そして、アンナは口を開いた。 「こういうのはジャンケンで決めるんじゃなくて、もっと効率のいい決め方で決めるのが筋ってモンでしょ?」 全員、アンナを不思議そうに見ていた。ジャンケンより、効率のいい方法なんてあるのだろうか?と。 「効率のいい方法・・・それは、レディファーストよ!」 「はぁ!!!?」 大ブーイングを巻き起こす男性陣。 それも仕方が無いだろう。全員、1番大きいケーキを狙っているのに、レディファースト、つまりアンナから好きなのを選ぶということは、大きいサイズのケーキが1つ減るという事だ。しかも、1番大きいのとなると、余計納得いかない。 「アンナ!!そんなの卑怯だろ!ジャンケンで決めるのが1番いい決め方だろ!?」 ホロホロがアンナに意見した。 アンナはホロホロをギロッ睨んだ。 「こういうときに『レディファースト』を使うものよ。『女性優先』!あんたはそういう心構えが無いからモテないのよ。」 ホロホロにキツ~イ最後の一言。ホロホロの心にグサリと刺さった。 ホロホロは四つん這いになり、どんよりと落ち込んでいた。 「待って。」 ハオはホロホロなど関係なく、アンナの前に出た。 「優先で決めるなら、みんなにもにも優先される権利はあるよ。」 アンナは『なんですって?』という顔で、ハオを見た。 「例えば、ケーキを持ってきたのはボク。ボクが来なければ、このケーキは無かった。だから、ボクも優先されることが出来るだろ?」 男性陣はうんうんと頷く。 アンナは『その手があったか』と言わんばかりの顔をしていた。 「今日はオイラの誕生日だぞ、ハオの言うとおり、オイラだって優先権利あるだろ。」 葉も意見した。 「誕生会の司会はオレだぜ、オレも優先される権利、あるよな。」 いつのまにか開き直ったホロホロも意見した。 ・・・あまり説得力のある意見だとは思えないが。 「ほらね、みんな優先される権利があるんだ。」 ハオはニコニコしながらアンナに言った。 そして、自分の意見を述べた。 「ジャンケンも反対、優先も反対・・。そしたら、あみだクジとかどう?」 『おー。』と言いながら、拍手をする男性陣。 そこで、アンナは口を開いた。 「解ったわ、それじゃあみだで決めましょ。」 そしてその2分後―――― たまおが書いたあみだくじに、全員自分の好きなところに名前を書き終えた。 「それじゃ、みんな自分のところからスタートして。」 ハオの一言で、全員で1枚の紙の中の自分の線を指でなぞり始めた。 「『3番目にデカいの』かぁ・・。まぁ普通だからいいか。」 ホロホロは3番目に大きいケーキを当てた。 「うわっ、僕なんか1番小さいのだよ。」 まん太は1番小さいケーキを当てた。 「うぇっへ。まぁいいんじゃねぇか、体も小さいんだしよ。」 葉はこの一言で、まん太と口論になってしまった。 葉は、2番目に大きいケーキを当てた。 そのほかの人が当てたのは、4番目に大きいケーキはアンナ、2番目に小さいケーキはハオ、3番目に小さいケーキは竜だった。 「ん?待てよ、誰が1番デカいケーキを当てたんだ?」 ホロホロの疑問で、全員『そういえば・・。』という顔になった。 1番大きいケーキを当てたのは・・・ 「俺だ。」 すでに自分のケーキを食べ始めていた、蓮だった。 「「何ィ~~!!!?」」 全員大絶叫。蓮が1番大きいケーキを当てるなんて、信じられないのだろう。 「フッ、何故か俺はクジ運がよくてな・・・悪いが俺様が当ててしまったのだ。」 蓮は悪戯に笑った。ホロホロはその蓮の態度を見て、遂にキレた。 「あ~もうっ!ムカつくな~!オレにも少し分けろ~~!!」 ホロホロは蓮に飛び掛った。 そして何故だか、ホロホロに続いてみんな蓮に飛び掛る。 「「分けろ~~!!!」」 こうして、民宿炎の夜は更けていった。 年に1回だけの自分の誕生日、葉は楽しめたのだろうか? ホロホロが蓮に半殺しにされたのを見て、葉はいつものように『うぇっへっへ。』とユルく笑っていたから、おそらく楽しめただろう。 ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○ 葉&ハオの誕生祝いに書いた小説! 『5月中までにはUP』を宣言していたのに、私ってばそれに間に合わなかった・・・。皆さんお許しを!!! この小説に載せたケーキの切り方、大きいのと小さいのとの差が大きいとかなり面白いですけど、ケンカになる可能性もあるのでご注意ください。 では、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました★
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